福祉的「施し」を必要とする者が福祉行政を執行する矛盾

つくづく身につまされましたよ…

今日は,主任児童委員さんの随行児童虐待対応専門研修の出張.

で,虐待事例の検討で出てきたケース.おおよそ,こんな感じ.

父親が子どもを叩いているようです.子どもは30分くらい泣き続けています.まだ,父親は子どもを叩いているようです.

Q.虐待をハケーンしました.こんなとき,あなたはどう対応しますか?

グループごとにブレストみたいなことやるんだが,みんなそれぞれ職務で児童虐待に携わってるもんだから「児童相談所に通告」「近所の人と一緒にその家に乗り込む」「町内会長に相談する」「(虐待が行われている家庭が)どんな家か近所に聞いてみる」とか保育士/幼稚園園長/主任児童委員,etc.の立場から離れずに言うのよ.

漏れは「警察に通報」と言いましたね,みんなの前で.だってさ,まず子どもがヘタしたら死ぬかもしれないじゃん?つーことはオヤジが子を殴るのを止めさせねばならないじゃん.止めさせるために,勇敢にその家に乗り込むのはいいけど,子どもは助かっても自分がケがするかもしれない.「勇敢な行動」に出るほどその家庭に義理でもあるの?よしんばその場,虐待はおさまってもあなたとヴァイオレンス父親はその後,同じ地域で生活していかなきゃならんのよ?ヘンに逆恨みされたらどうする?

だったら「いやぁ,たまたまパトロールに出てたらお宅から子どもの泣き声が聞こえたんだけど,どしたの?」と職務権限で介入できる警察に連絡した方がいいんじゃない?ボキが通報したから警察が行ったのかもしれないけど,警察官はそんなこと言わないよ*1

だけど,「警察」って口にするとみんな「それはちょっと…」って顔するんだよ.なるべくコトは大きくしないで,市民の力でなんとか解決しましょう,と模範的な市民(それを期待される公職にある人)は思うんだろうね.それって,やられてる子どもをどうするかという視点が落ちてるんだよ.児相なんて一番最後,もしくは通告するの忘れていたっていい.

まぁ,最終的にフロアの意見をまとめてた児童相談所児童福祉司が言ってましたが,児童虐待って一つの機関で完結的に処理なんてできないんだよ.フォローが必要なんだから.一つところでできないってことは,各々の分で優先度をつけて対処していかなきゃならないわけで,今週に入ってまたもあらたな虐待ケースを抱えることとなったボキは自戒の意味を込め銘記しとく.

子どもが父親に対して怯えていたので,児童相談所は子どもを一時保護しました.後日,児童相談所に父親一人が来ました.面談すると,この間の虐待は,子どもがスーパーで万引きしたことを咎めてのことだったようです.

父親に母親が来所しなかったことを訊ねると,母親は精神疾患であること/借金の返済に困っており生活が苦しいことなどが分かりました.

Q.どのような支援をすることが考えられますか?

ここで前述の児童福祉司

「え〜,ここでみなさんに理解していただきたいのはですね,借金を解決する機関はどこにもないということです」

厳然たる事実.検討していた事例の中に自分がいた,これが公務員として,福祉行政を預かる者として最も許されざる状況である.ともかくいたたまれなかった….

行きの道中で主任児童委員さんに「でもねぇ,あなたは立場上結婚しないとダメだわ」と言われた(自分で少子化対策ができない_| ̄|○)次世代育成支援担当.その一言よりへこみました….もう,とにかく申し訳ない気分でいっぱいだった.

*1:「隣から通報あってさぁ」とか言っちゃうような警察官に巡り会った場合はお気の毒.