「こんにゃく談義」(NHK:19570413放送)(「NHKアーカイブス」から)

番組内容:http://www.nhk.or.jp/archives/program/back051023.htm
はじめて,徳川夢声の声を聴いた.映像で観たのもはじめて.
番組自体は,その前身の名称である「こんにゃく問答」という根多よりは「浮世根問」に近い.ご隠居:徳川夢声と八っつあん:柳家金語楼の,ほんとうなのかでたらめなのか分からない雑談,というか時事放談.そこに,毎度お客さんが入っている設定.ただ一本だけ残っていた(奇跡!こういうものは,ふつう見られないと思う)というVTRでは,東工大の桶谷繁雄さんという先生が出ていた.
話題は,相次ぐ水爆実験による放射能の話(そういう時代だった)と,桜の話.放射能の話は,お客さんの桶谷先生が,番組の設定に沿いつつ「八っつあんね,…」「ご隠居ね,…」と呼びかけながら,ポイントをコンパクトに説明.冷戦のど真ん中の時代にあって,敗戦国の公共放送としてはけっこう手厳しい隠居と八っつあんのやり取りが展開されていた.ソ連の実験を肴に,という談論の進め方ではあるのだけれども,米ソ両国を撃つという感じの応酬だった.
桜の話は,八っつあんが「盛岡の石割り桜ってのは,あれは石が先にあって桜が間から生えてきたの?桜が先にあって石があとから出てきたの?」という突っ込みにご隠居たじろぐ,という場面もあって,生放送ゆえの緊張感がもたらした(と思われる)「浮世根問」のリアリティがあった.ちょっと,金語楼・八っつあんが学があり過ぎのようにも思われたが,面白かった.何より,そこでの会話の内容が,こちらの不勉強もあり,また,放送から50も経った時代の人間が見ているということもあり,果たして事実をもとに正しいことを語っているのかハラハラする内容で,そこにも「浮世根問」のリアリティを感じた次第.
(20051024記す)