年始の祖母との会話

 初詣の後,母の兄,つまり伯父宅に恒例の年始の挨拶に行く.毎年,正月はこの伯父の家で祖母が年末年始を過ごしている(普段は,私の職場のあるまちのグループホームで暮らしている).当年とって95歳.今年も,伯父宅で机に向かって『美味しんぼ』を眺めているその人がいた.「ばあちゃんは字は読めないけど,絵ぐらいは分かる.退屈しのぎじゃ」みたいなことを話していた.
 仏壇に手を合わせようとするその時,祖母がおふくろに向かって「えーと,この子は何て言ったかな?」
 おふくろは「ゆっくり思い出しなさい」と返した.
 線香をあげ,仏様へのご挨拶が終わった後,「H2SO4ちゃんはいつまでこっちにいるの?」と私に話しかけてきた.名前,意外に早く思い出したなぁ,と思いつつ「ん〜,しばらくいると思うけど」と返事した.
 その後,「H2SO4ちゃんはいつから仕事?」「いつまで休み?」と何回か訊ねられた.その度に「6日から仕事だよ」「5日まで休みだよ」と静かに答えた.
 また,何か思い出したように「ばあちゃんも今年で91歳だからなぁ…,自分の母親は32歳で死んでしまったのに」とこちらに語りかけてきた.おふくろが「サバ読んで(笑),今年95歳だよ」と教えると「そうか,今年で95歳か」と一旦は納得する様子.しかし,しばらくすると「今年で90歳だよ,自分の母親は32歳で死んだのに」「今年で100歳かぁ」と誰に言うとでもなく,だが年に似合わず明瞭な発音でもって,実年齢±5歳くらいの世界の話をしていた.年寄りらしく,自分の母の享年だけは間違っていないことに,私は微苦笑していた.
 昨年末,体調を崩し,一時入院していたのだが,それ以後,やや認知症というかover90ならこれくらいのボケも普通かと思うが,以前よりボケが進行したような気がする,と伯父やおふくろたちは話していた.その入院時,医師に「この年齢で全く動脈硬化がない人は初めて」と言わしめた祖母である.百歳以降の祖母が見たい.
 ちなみに孫の私は,昨年「60代後半の動脈硬化ですね…」と言わしめた不肖の孫である(爆)
(20060103記す)