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 本書にも(著者の使用している文脈と当方の用法は違うのだが),

35歳をすぎ,人生の中間点あたりに来て「人間の一生は短い!」(p.110)

とあり,自分自身も「34歳で今更『勉強法』の本でもないだろうが」と思いつつも,なぜかあたしはこの手の「勉強メソッド本」に目がない.たぶん,その理由は,方法論そのものはどの著者のであってもそれほど変わらないだろうけれども,その方法論にたどり着くまでに著者がどのような過程を経たのかに自分の関心があるからだと思っている.
 著者は,予備校の英語講師で英語に関する資格試験の最上位をことごとく突破している方で,著書で披瀝されている方法論は「音読学習」と「成功体験の獲得」.これ自体は,他の類書にも見られるやり方だし,思い起こせば自分でも取ってきた方法ではある.その方法論を,著者らしく"off the beaten track"とか"try everything once"といった英語のフレーズをもってかなり平易に説明していて読みやすい.
 著者は勉強を「訓練と暗記」と断言して上述の音読学習を中心とした全身感覚を利用した勉強法を展開している.これも類書で同様な方法論が展開されているように思う.
 結局のところ「訓練と暗記」としての勉強は,訓練すべきことや暗記すべきものを小さな単位に分け反復することで記憶させるという「成功体験の獲得」ということをヴァリエーション豊かに展開する,ということなのだと思う.ただし,小ユニットへの拘泥だけでなく全体を見通しておく(歴史学習でよくいう「流れをつかむ」ということも同義だろう)というミクローマクロの視点の往還も忘れずに,という留保付きで.
 この著者らしさを感じたのは「スランプ打開には,海外旅行がもっとも有効!」というvery expensiveな提言だ.行きたいところはいろいろあるが,日本ですら京都以西には行ったことがなく,まして万年貧乏の私の海外渡航は果たしていつのことになるやら….