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 2冊.

伊藤真の 司法試験に合格する勉強法

伊藤真の 司法試験に合格する勉強法

 タイトルに違わず前回書いた安河内哲也氏の『勉強法』よりも司法試験対策(とりわけ,ロースクール経由の新司法試験ではなく従来型の司法試験)に力点を置いた内容となってはいるが,紹介されている勉強法のエッセンス自体は類書とそう変わらないように思う.私が"Without haste,but without rest"と覚えていたものを"FESTINA LENTO"とラテン語で表現しているのがいかにも法律家らしい.
 司法試験において基礎知識を問う内容の「択一試験」においては,

「1つ1つの肢(選択肢)を、迷わずに切り捨てられたかどうか」が重要(p.151)

なので,過去問により知識を100%確実なものにしていく…とか,論文式試験では「既知の問題を増やすよりも未知の問題にいかに対処するかに勉強のウェイトを置け」とかと司法試験の実際に即して書かれてはいるが,その要諦は他の試験にも十分通用する.法律上の「要件と効果」(一般的な論理でいうところの「必要条件と十分条件」の双方からのアプローチで問題を考える───本書で言えば,要件から効果を導き出して図示化していくのが「フローチャート」,複数の効果を想定して要件に結びつけていく図示化が「ロジカル・シンキング・チャート」───というアプローチも汎用性の高い答案作成法ではないかと思う(歴検1級の論述を念頭に置いているのだけど).
 この本は,見開きでページ下に司法試験や学習法に関するQ&Aが載せられているのだが「司法試験では色鉛筆等の使用も可」という事実には驚いた.今まで,そういう試験受けたことなかったなぁ,と.
 さて,前回も書いたように勉強法を読み漁るのもそろそろ潮時.

ヘウレーカ (ジェッツコミックス)

ヘウレーカ (ジェッツコミックス)

 『寄生獣』の岩明均古代ローマもの.
 この本に先んじて『ヒストリエ』をコミックスで読んで「面白い!」と思っていたので,わくわくしながら読んだ(感想と表現が陳腐!).
 第2次ポエニ戦争期のシチリアの話.名将・ハンニバルによりBC216年8月,ローマは8万の正規軍を5万のカルタゴ軍に殲滅される.次にカルタゴは,シチリアをローマ同盟市から解放して島内のローマ人を虐殺し,シチリア奪還を目指すローマ軍を天才数学者であり技師のアルキメデスの考案した重装備群・要塞で迎え撃つ.
 当のアルキメデスは,今でいうと認知症───まるで雰囲気が出ねぇや───というか「恍惚の人」ではあるのだが,ローマ軍を苦しめる数多の武器の開発については,その武器の殺傷能力を十分知っていながら開発したのだから技術者の自分も同罪である,というように時にまっとうな技術者倫理を口にする.私があまりにアルキメデスを知らないから意外な感じなのかもしれないが,ともかく岩明均が描いたアルキメデスとは,現代の科学者にも突きつけられている課題としての技術と倫理に敏感な人間であった.
 関連して,第2次ポエニ戦争を最終的にローマの勝利に導いた大スキピオについて山川の世界史小辞典で調べると,ローマの「内乱の1世紀」で内政改革の途中,殺害されていったグラックス兄弟大スキピオの孫,小スキピオ大スキピオの養子で,グラックス兄弟と対立するうち謎の死を遂げた,などの細かい情報が仕入れられた.
山川 世界史小辞典

山川 世界史小辞典