朝青龍問題:なんか論点ぼやけすぎではないのか?

 ROMしているMLでは「モンゴル人横綱・外国人力士に対する差別だ」という意見まで出てて,それはあまりにもトンデモなお考えだと思うのだが.
 まず,横綱は巡業に耐えられない体の故障があることを医師の意見書を添えて協会に提出している.その内容は,ご存じのとおり次のようなもの.

朝青龍、腰の疲労骨折など全治6週間
名古屋場所で優勝した横綱朝青龍(26=高砂)が、8月3日から始まる夏巡業を休むことになった。25日に高砂親方(元大関朝潮)が巡業部に「腰の疲労骨折と左ひじのじん帯損傷で全治6週間」の診断書を提出した。朝青龍が巡業を休むのは昇進後初めて。高砂親方は「入院してしっかり治すように本人には伝えた。負傷が治れば、巡業の途中から参加することも考えられる」と話した。

(「日刊スポーツ」[2007年7月26日9時40分 紙面から]http://www.nikkansports.com/sports/sumo/p-sp-tp3-20070726-232564.html

 あたしは医者ではないので,「腰の疲労骨折」という状態がどれくらいのものかよく分からないが,それにしても高砂親方が「入院してしっかり治すよう」伝えたくらいの,軽傷とはいえない状態だろう.にもかかわらず,故郷のモンゴルでサッカーに興じる本人を撮影した映像が伝えられたわけで,これは,診断内容そのものについて疑念が出てきて当然だと思われる.サッカーはできても,巡業には耐えられない故障,というのは素人目に考えにくい.
 ということは,朝青龍詐病したのか?
 また,主治医は,それを詐病と気づかず診断書を作成したのか?しかし,骨折を診断するからには,レントゲン撮影等により診断を行っていなければならないはず(触診や問診で分かるものではない)だろうから,考えにくい.
 そう考えていくと,朝青龍及び主治医との間に何らかの共犯関係があって,偽りの文書を作成し協会に提出したということになると思われる.この点をまず,朝青龍と主治医,協会は明らかにすべきだと思われる(あたしにとってはさして重要な問題ではないので「明らかにしなければならない責任がある」とまでは言わないが).
 次に,今回の問題に関する協会の見解に引っかかる点がある.

2007/08/01-16:15 朝青龍に異例の厳罰=謹慎中、行動も制限−相撲協会

 日本相撲協会は1日、横綱朝青龍(26)=本名ドルゴルスレン・ダグワドルジ、モンゴル出身、高砂部屋=に前例のない厳罰を科した。2場所出場停止は、大関以下を含めても最長となる。
 処分は(1)秋場所九州場所の出場停止(2)減俸30%(4カ月)(3)九州場所千秋楽までの謹慎−の3点。謹慎中は特別な理由がない限り自宅、高砂部屋、病院だけに行動を制限し、モンゴル帰国も原則として認めない。
 このため秋場所後の巡業も参加できず、九州場所後の巡業(開催地未定)から公式行事に復帰することになる。
 師匠の高砂親方(元大関朝潮)も減俸30%(4カ月)とした。
 記者会見した相撲協会伊勢ノ海理事(元関脇藤ノ川)は、巡業不参加を申し出てサッカーをした朝青龍の行為を「軽率だ」とした上で、処分理由を「模範であるべき横綱がこういう行動をするのは出場停止に値する」と述べた。
 朝青龍が届け出たけがは仮病ではないかと疑われたことについて、伊勢ノ海理事は「診断書は正当なものだと思う」と語り、誤解を招いたことが処分の対象だとした。
(「時事ドットコムhttp://www.jiji.com/jc/c?g=spo_30&k=2007080100733,下線はblog主)

 「診断書は正当なものだと思う」という前に,協会は再度医師を指定して朝青龍に受診させ,診断に必要な検査等を自前で行った上で,当初提出の診断書の内容とに相違がないかどうかを検証すべきであって,単に心証で処分を決めるのはどうかと思う.
 さらに言えば,協会が言う処分理由の「誤解を招いた」というのは,一体何についての誤解なのかさっぱり分からない.これは,あたしが複数のソースに当たっていないからかとも思うが.
 順序は逆になるが,上述記事中の伊勢ノ海理事のコメントである「軽率だ」という認識については,記者会見の席上発言していたのを見ているので,これが協会としての見解か理事個人の見解かどうか分からないけれども,「誤解を招いた」よりもさらにひどい発言だと思われる.
 今回の朝青龍の行為を「軽率」だとする認識は,管理職として妥当でないと思われる.
要するに今回の朝青龍の問題は,将来は幹部となりうるような社員が「骨折してたり肘がだめになったりでとても職務に耐えられる状況じゃないです」と届け出ておいて,静養先で大はしゃぎ,しかも全然体どこも悪くないではないか!ということを社外から指摘されたわけだ.それを役員が「軽率」だったというのは,どこかに「バレ無いようにうまくやれよ」という言外のニュアンスをとられても致し方ないだろう.また,休暇を許可した組織運営のずさんさを指弾されても仕方ないだろう.
 今回の問題は国技の体面とか横綱の品格といった相撲固有の世界観とは必ずしも完全に分離することはできないだろうが,どこかのやくしょで「病気休暇中の職員がマラソン大会に出て入賞していた*1」といったニュースが以前報道されていたのと同様に,組織として当人にどう責任をとらせるかだけでなく,組織としてどのように状況を検証し,その結果を受けてどのように処分するかを詳らかにすること,組織が事態をどのように受け止めているかを伝えることの方が大事なのではないだろうか.
 そういうところをおろそかにして,品格だのなんだのをあげつらう世間の俗情におもねって,コトがうやむやなまま問題社員を厳罰に処し,あげく本人が精神不安定になると組織までおろおろしちゃう.人のこと言えた義理ではないが,品格ある態度ではないよなぁと.

*1:たしかココロの病気で病休中のことだったと思う.ココロの病気の場合だと少し対応というか,考えも変わるのだけれども.