旅は疲れる…

 気力・体力がそれなりに充実していないと,いつも旅で体験するような発見と思索・回顧──と表現するとえらく高尚なもののように思われるが,単なる思いつきをめぐる頭の中でのひとり遊び──がうまくできない.
 今回の場合は,それに加えて宿が息苦しく感じた.以前にも何度か使っているビジネスホテルで,それまでは料金的にも宿としてのアメニティの点でも満足ではあったのだけれど,上述のような心身の状態だったからか,部屋にとどまり続けているのがつらくて,時には「窒息してしまうのではないか?」という恐怖感を何度か覚えた.
 かといって,部屋の外に出て,夜のどこかの末席に身をおいて宴に興ずる人の姿や話を肴に孤独を噛みしめる酒を求める気にもならなかった.この夏の盛りに札幌にいて,結局一度もビアガーデンに行かなかったのは初めてかもしれない.もちろん,現代の酌婦や遊女とも遊ぶ気にもなれなかった.ただ,そうした街の臭いというか雰囲気にだけは触れたかったので,ぶらぶら歩いていたら,今日は脛のあたりに張りを覚える始末でみっともない.
 旅先での目的であった研修については,講師の方々には大変失礼を承知で申し上げれば,やはりみなさんふだんは事務方であって国保の仕事を講じることを業とはしていないため,話にライブ感がない,つまりはテキストの朗読に近いようなものになっていて,少々退屈だった.そのため,持ち込んでいた研修とは無関係の本を読みながら,時々,講師指定のテキストの該当部分を眺める,といった不真面目な受講態度だった.決して座学は嫌いではないのだが,講師が話す中身を咀嚼しきれないで資料ベースで説明してしまうようなライブ感のない授業あるいは講義にはノレない.余談だが,どうしても語りでの説明に困難さを感じるなら,逆に資料の方をマニアックに,細かく書いてくれればいいのにと思う(そういう意味で,パワーポイントを使って作られた資料で,その中身をただ単になぞられるような説明だと,退屈で,退屈でならねぇや,の後にあくびが出そうだ).
 2泊3日の旅程に疲れ,汽車も便を早めてグリーン車に乗って,今,帰途の車内でこの旅の雑感を書いた次第である.