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何でも機械がやってくれるわけではない

 3月までやっていた仕事のことだが.
 国では,平成18年度に「障害者自立支援対策臨時特例交付金」という補正予算を組み,各都道府県にこれを受け入れる基金を作り,20年度までの3年間,この基金を活用させて各市町村に障害者自立支援法の円滑施行のための各種メニュー事業を行わせている.その中に「視覚障害者等情報支援緊急基盤整備」というのがあって,これは,視覚障害者や聴覚障害者が公共機関で利用する情報機器の整備に関する補助率10/10(上限100万円)の事業である.
 当時担当者だったあたしは,弱視の障害があったり高齢のため小さな字が読めない人が利用できるかと考え,携帯型拡大読書器を導入することで事業の活用を考え,予算計上した.当初,いくら導入するにしても補助の上限額いっぱいまで入れる必要はないと考えて予算要求していたが,理事者ヒアリング(その席にあたしは入っていないが)の結果,予算いっぱいまで機器購入するよう指示が理事者から出たという.
 で,その読書器が最近,会社に届き,社員がいろいろいじっているのだが,その読書器を使用して窓口で申請書類を書けない,だからあまり使い出がない,これは無駄遣いじゃないの?といった批判めいた話をしているのを耳にした.
 う〜む.そもそも,これ,読書器であって,あくまで小さい字を拡大して判読可能にするためだけのものであって,これを使って申請書の中身を読みながら,必要事項を記載するなどということは想定していないのではないかと思うのだが.そもそも,視覚に困難を抱えるお客が来たときには,まず窓口の人間が必要な手助けをするのが当たり前のことだし.
 雑談の中で「これはムダだったかもしれないねぇ」などと現担当者──あたしの元上司だが──まで言い出す始末で.予算執行の権限があって,実際に執行した人間なのにねぇ….この人は,いろいろと障害のある人たちのありうべき社会像をそれなりに熱く語る人なのだが判断は部下任せ,という人で,また,基本的には障害者福祉はあたしに投げっぱなしだったから,分からないのだろう.う〜む.執行段階でもっと使い出のあるものを検討して導入すればよかったのではないか.自分で買っておいて,それを腐すくらいなら.
 結局,あたしも含めて,実際に視覚障害のある人が情報へのアクセスに関してどういうニーズを持っているか分かっていないということが露見しているように思う.さらに,機械はその機能により利用範囲が限定されるのは当たり前の話で,機械を入れることでこれもできる,あれもできるというようなことではない.もちろん,本来の機能が別の目的を実現することもあるかもしれないが,それはあくまで例外なのだ,…というどうでもいいことを休みにふと思った.