読書メーター2010.01月分

 最終週以外は再掲.
 ベストは『デフレと円高の何が「悪」か 』.ほんとうに類書は相当数出ているが,大学の教科書に使うような標準的な経済学の知見をここまで噛み砕いて書いているものはない.とはいえ,いかんせんあたしも経済学を修めてきたわけではないからこれ以上のコメントもできないのだが,本書に書かれているような処方箋があるのなら「まずリフレしてみてはどうか」と思う人がどんどん増えるといいと思う.植木等じゃないが「ブワーッといこう!」感がどこにも感じられないこの現在だからこそ打つべき経済政策じゃないのだろうか.そう楽観的に「これに賭けてみろ」とも言えないが,みんながつましくせこくやってきた結果がこのありさまなのだ.政策を打つ側の気持ちが変わらんとどうにもならんが,それでも多くの人が本書に書かれているような歴史や理論を自分の理解の中に入れてしまえば,頑固者も重い腰をあげるやもしれぬ.
1月の読書メーター
読んだ本の数:14冊
読んだページ数:2337ページ

へうげもの 10服 (モーニングKC)へうげもの 10服 (モーニングKC)
読了日:01月31日 著者:山田 芳裕
ザ・前座修業―5人の落語家が語る (生活人新書)ザ・前座修業―5人の落語家が語る (生活人新書)
読了日:01月26日 著者:稲田 和浩,守田 梢路
デフレと円高の何が「悪」か (光文社新書 440)デフレと円高の何が「悪」か (光文社新書 440)
類書は光文社新書にも他にもたくさんあるが,大学で経済学を修めてこなかった「経済学マニア」(そうは言っても元銀行マンであるし,現在も勝間和代の事業のパートナーで素人ではないのだが)がとにかく平易簡明に表題どおりの内容を説明してくれているところがウリ.2時間もあれば読める.あとは政府・日銀よ,さっさと・本気でデフレ退治に乗り出しておくれ!
読了日:01月24日 著者:上念司
日本のみなさんさようなら日本のみなさんさようなら
再読.
読了日:01月23日 著者:リリー・フランキー
昭和幻景 消えゆく記憶の街角昭和幻景 消えゆく記憶の街角
読了日:01月11日 著者:藤木 TDC,イシワタ フミアキ
吾輩は天皇なり―熊沢天皇事件 (学研新書 14)吾輩は天皇なり―熊沢天皇事件 (学研新書 14)
戦後小さな騒動となった自称・後南朝後胤の評伝.権力奪取を伺う者が自身の正統性の担保として「玉」=天皇を担ぎ出す,これが2・26事件でも画策されていたようでこのイデオロギーは根深い.瀧川政二郎まで出てきたのに「熊沢天皇」の主張が正答に吟味され決着を見なかったのは果たして不幸だったのかどうか.戦後の政治体制の変化で「熊沢天皇」の正統性は法的にも埒外とされたが,結果にめげていなかった様子がやんごとなきお方らしい人柄を思わせる,なんてな.時折出てくる妻がサバサバしてて好印象.
読了日:01月09日 著者:藤巻 一保
朝鮮人特攻隊―「日本人」として死んだ英霊たち (新潮新書)朝鮮人特攻隊―「日本人」として死んだ英霊たち (新潮新書)
標題どおりの,太平洋戦争期に特攻隊として死ななければならなかった朝鮮半島出身の兵士たちについての記録かと思ったが,その朝鮮人特攻隊の記憶や存在そのものが現代の韓国の人々にとってどのように理解──本書で示されている多くは「日帝のために死んだ民族の裏切り者」ともいうような「拒絶」なのだが──されてきているのかが本書の主題.侵略国の英霊となった同胞から現代の韓国社会を照射するノンフィクション.読まれるべき佳作.
読了日:01月08日 著者:〓 淵弘
関東軍―在満陸軍の独走 (講談社学術文庫)関東軍―在満陸軍の独走 (講談社学術文庫)
関東軍成立から満州事変,ノモンハン事件,「関特演」と1945/8/9ソ連軍侵攻による壊走までの通史.関東軍を通して見た陸軍軍政史とも読める.ちょっと読むのに時間をかけすぎてしまってこれは再読対象.講談社選書メチエの同名書を読んでからにする.
読了日:01月05日 著者:島田 俊彦
『砂の器』と『日本沈没』 70年代日本の超大作映画『砂の器』と『日本沈没』 70年代日本の超大作映画
世代のせいもあるだろうが,本書に取り上げられた大作を観て大人になってきたこともあり,頭ごなしに「駄作が死屍累々」のようなことを言われたんでは立つ瀬がない,などと思っていたが,著者のこれら作品群への評価は予想していた酷評ではなくむしろ「憎みきれないろくでなし」といったところか.愛がある.その分,フォローがやや強弁気味になるのもまたいい味わい.角川作品の一部は原作のプロモーションとして成功している,との評価には大きく首肯.
読了日:01月04日 著者:樋口 尚文
珈琲時間 (アフタヌーンKC)珈琲時間 (アフタヌーンKC)
『アンダーカレント』のような一つのストーリーを考えていたが,短編集でありつつ最終話で一つの物語に収斂していく.ウェットにならない,というかウェットにしないストーリーテリングの意志を感じる.佳作.
読了日:01月03日 著者:豊田 徹也
東京怪童 2 (モーニングKC)東京怪童 2 (モーニングKC)
掲載誌をフォローしていないので2巻刊行にあわせて一気読み.どんどん画風がアメコミタッチになってきているというか,クリアな画面構成になってきている.いわゆる発達障害を含めた脳科学の問題をモチーフにして,これをクライアント側の器質の問題にするのか,治療者の変化に象徴される趣味の発現とするのか,一気に両者をすくい取ってしまうメタレベルの視点で話を動かしてしまうのか,いまのところ見通せない.
読了日:01月03日 著者:望月 ミネタロウ
東京怪童 1 (モーニングKC)東京怪童 1 (モーニングKC)
読了日:01月03日 著者:望月 ミネタロウ
奪われた「三種の神器」―皇位継承の中世史 (講談社現代新書 2022)奪われた「三種の神器」―皇位継承の中世史 (講談社現代新書 2022)
主として南北朝期の通史を「三種の神器」の動向を中心に概説するような内容を想像していたのだが,けっこう教科書外の細かさで難しかった.後半は著者の専門とする赤松氏の興亡と再興過程が詳述される.後南朝失地回復と反幕府派の「造反有理」を示すための三種の神器との利害一致,管領家相互の覇権抗争等々応仁の乱の淵源が見えてくる.
読了日:01月02日 著者:渡邊 大門
これを読まずに「江戸」を語るな (祥伝社黄金文庫 う 5-1)これを読まずに「江戸」を語るな (祥伝社黄金文庫 う 5-1)
読了日:01月02日 著者:氏家 幹人

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