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20数年ぶりの札幌・大通逍遥

年に一度あるかないかの出張帰りに,汽車を一本遅らせて.

4月から主担当になった業務の一日研修のあと,札幌医大のそばの会場から出て東進する.目的地はジュンク堂書店で,数年前にオープンしたのは知っていたのだが,歳を取るにしたがいどうも丸井今井近辺というか,大通駅周辺に寄り付かなくなってしまって行きそびれていた.昔は,大型書店といえばPARCO内の冨貴堂ブックセンター(高校の教科書の販売場所がここで,入学前に教科書を取りに行った時は未知の規模に興奮した)や今は無き旭屋書店で,買いもしないのによく行ったものだった.近年は札幌駅周辺で大体用が足りてしまうのと,歩くならすすきののいかがわしさを視覚・嗅覚・聴覚から堪能するのが乙(いわゆるひやかし,素見ですな)と一人悦に入っていたもので…….

日中は青空だったのが曇り空の下,歩く.研修で配付された資料とPC,全部読めるわけでもない文庫やら新書やら5冊ほかを詰め込んだカバンをリュックのように背負って歩いていると,ベルトがどんどん肩に食い込んできて,次第に普段楽をさせている左肩が痛み出した.人より牛のほうが多いまちから出てくると,行き交う人や自転車にぶつからないように普段使わない神経を使う.歩いている人,というのは地元では「メタボ解消」という崇高な目的に身を捧げている人であり,都会に出てくるとこの都鄙の転倒に感慨を覚えるのだった.

それにしても自転車乗りがかつてに比べ増えたように思う.中には,なんていうのか,エアロフォルムのヘルメットを装着して多段変速のスポーツタイプを駆る中高生と思しき女子もいて,ひところワイドショーがフレームアップしていたピストの流行なんかもあいまって当地でも自転車が流行ってるのかと思った.まぁ,ママチャリでもなんでもいいが,自転車は車両なので車道を走りなされ,と歩く立場になれば思い,平素のドライバーの心情はどこかに置き忘れているのだった.

行き交う人のコーディネート――といっても成人男性は大概スーツなので目にとまるのは女性のだが,これまた,なんていうのかモードというか服飾にはまるで疎いので漠然とだがそれぞれに春らしい装いだ.どういう観点から「春らしい」と感じたのか,それを語ることばを持っていないのでなおつらいが,薄手感? 淡色感?

市電に並行して進み,西4丁目くらいまで来ると,大通エリアの中心でも大型ビルが建て替わったのか,けっこう街の外観が変わったなぁという印象だ.あたしの基準が20数年前の高校生・浪人生時代だから,そりゃ変わるのも道理なんだけど.なんだか,白っぽくて新しい商業ビルが多くて,その膨張色ゆえにか見上げると建物が歩道に迫り出してきているような感じだ.

で,目的地の丸善ジュンク堂書店の入る丸井今井に着く.百貨店1階のあの,コスメ臭満ちる空間,「できればあなたの目に触れたくなかった! 生まれてきてすみません!」と勝手に自己卑下させられてしまう,眩くきらびやかな美容部員たちの汚物を見るがごとき視線(言うまでもなく被害妄想,と思いたい)に耐えて「どこだどこだ」とフロアを歩き回っても,本屋なんかない.改めて案内板を確認すると,目的地は南館で,あたしがいたのは一条館だった.大通の丸井さんって,こんなんだったっけ? ちなみに下流を生き抜くあたしが「丸井さん」ということばを使ったのはこれが初めてである.アッパークラスとは無縁だったし,物心ついた頃にはすでに丸井今井は経営危機が話題になっていたので,道民のある層の,往時の老舗への愛着と敬意を含んだ「丸井さん」という表現は後に仕入れたものだ.

(つづく.いや続ける)