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 少年法とともに,5/25改正されたという.

改正児童虐待防止法が成立 「もう死なせない」
立ち入り接近禁止 相談所に強制力
 25日の参院本会議で、改正少年法などとともに可決・成立した改正児童虐待防止法。子供の虐待死が後を絶たず、児童相談所への批判が高まる中、難しいケースに対応するため、児童相談所の権限を大幅に強化する内容だ。改正法の施行は来年4月。新しい武器を手に、今度こそ、悲惨な事件を防げるようになるのだろうか。(社会部 渡辺亮、岩永直子)
(中略)
・問われる実力

 今改正で、児童相談所の権限は大幅に強化されるが、事態改善に直結すると期待する声ばかりではない。現状では、児童相談所によって取り組みの差が大きく、「結局は、関係機関との連携や工夫を重ねなければ、様々なケースには対応できない」との指摘もある。
 昨年、神奈川県内の児童相談所が、心を病んだ母親が子供とともに、カギをかけて閉じこもった事例で立ち入り調査に踏み切った。親族を捜し当て、一緒に説得したものの、中から反応はない。最後は親族に玄関のチェーンを切ってもらい、調査を断行した。
 性的虐待を加えていた子供を取り戻そうと、一時保護所に乗り込んでくる暴力団関係者について、弁護士や家裁調査官と協力して親権を喪失させた事例もある。一時保護した子供を親が連れ戻しにきた際、子供の「助けて」という訴えを重視し、法的裏付けのない面会制限をしたこともある。
 これらのケースについて、同県中央児童相談所の小林秀次所長は「親から訴えられたら、どうなっていたかわからない」と、今回の法改正を歓迎する。その上で、「強力な武器を与えられるのだから、児童相談所は、もう下手な弁解はできない。新たな武器を効果的に使いこなせるよう、我々はこれまで以上に専門性を磨く努力が求められている」と自戒を込めて語った。

[改正の骨子]
児童虐待の恐れがある場合、保護者に出頭要求する制度の創設。
▽保護者が出頭要求に応じない場合、裁判所の許可を得て、児童相談所が強制的な立ち入り調査を行う権限の付与。
▽立ち入り調査を拒否した場合の罰金を「30万円以下」から「50万円以下」に引き上げる。
▽裁判所の承認を得て強制的に施設入所させた子供に対する、つきまといなどを禁じる「接近禁止命令」の創設。
▽重大な児童虐待事例の分析を、国や自治体の責務とする。
http://www.yomiuri.co.jp/komachi/news/mixnews/20070526ok02.htm

 今回の法改正で,参照した記事にあるようにネグレクトに対する児童相談所の介入権限が強化されたとは言えると思う.ただし,児童相談所の指揮の下,強権発動の前に行動しなければならない市町村にとっては,この改正を歓迎しつつも「果たして『伝家の宝刀』はいつ抜かれるのか?」が心配だろう.
 ネグレクトは,本当に対応の仕方の難しい虐待だ.容易に介入できればそれでよい,というものではない.虐待を加える親自身が精神的に病んでいる,あるいは人格的な問題を抱えて放置しておくことが親子ともに危険という場合には,ともかく子どもの生命や心身の危機的な状況から救いだすために強制的な親子分離を可能とする権限の拡大は有意義だろう(記事中で懸念されている手続きに要する時間の問題はあるが).
 しかし,ネグレクトのレベルはそうした一刻の猶予を争うレベルのものだけではない.単に親の養育の稚拙さによるもの,というような場合は,児童相談所は介入をしてこない.前回の法改正で,市町村と児童相談所との棲み分けがなされたからだ.そうすると,市町村は,保健師生活保護ケースワーカー,民生委員や主任児童委員,子どもの所属する幼稚園・保育所・学校など子どもと親に接触できるチャンネルをフルに使って,ともかく事実の積み上げと,接触できる人を通じた間接的な助言なり指導なりをすることが通常の対応となる.市町村にとっては,依然としてかつての「児童虐待防止ネットワーク」───市町村によっては児童福祉法に基づいた「要保護児童対策地域協議会」───を通じた「見守り」と呼ばれる経過観察を続けていくほかない.
 この法改正により児童相談所にとっては,子どもを強制的に親から分離する「一時保護」は格段にやりやすくなっただろうが,発動のタイミングは児相に委ねられていることは変わらない.結局,市町村は児相への「お伺い」を通じて,経過観察と児相への子どもの送致(ケースの児相への移管)の間で揺れることとなるだろう.
 かといって,政策的にどこまで児相を拡大していけばいいのか,あるいは市町村に児相の児童福祉司なみの権限を与えて児相同様の手続きでケースに介入できるようにすべきなのか,児童虐待に対する行政の包囲網を拡大・強化していけばいいのか,わからない.ただ,児相が「これまで以上に専門性を磨く必要がある」ならば市町村も同様に,適当なタイミングで適切に家庭に介入していくための専門性は必要であり,それを国なり都道府県が養成していく必要はあるのではないか.そして,そのための職員が児相・市町村とも圧倒的に少ないことを国は十分理解すべきだし,特に小規模町村においては,児童福祉=児童虐待対応ではなく,まして福祉=児童福祉でもなく,厚生労働省が所管する業務の束をすべて2〜3人で対応しているということを理解すべきだと思う.厚生労働省に愚痴ったってしょうがないとは思うが,現場は相談対応と補助金交付金事務やらなにやらを並行して処理しなければならない状況にあることは分かって欲しいなぁと思う.