読了
- 作者: 安部譲二
- 出版社/メーカー: 産経新聞ニュースサービス
- 発売日: 2004/03/27
- メディア: 文庫
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戦後の,死者が出た12の事件を著者が余人を持って代え難いその経歴から得た知見を元に推論し,「真実」を炙り出そうとした作品…とはいうものの,どのケース・プロファイルでも「講談師見てきたような嘘を言い」の,やや牽強付会な論理展開になっている(嘘ではないのだけれど).もっとも,扱われているケースのほとんどが,その一つを取り上げただけで十分に一冊の本になるくらいの重みのあるものではあるので,緻密に議論を進める紙幅はなかったのだろうし,おそらくは雑誌連載記事の修正なのだと思われるので,掲載誌の都合上,そうならざるを得なかったのだろう.
取り上げられているケースの多くに,政官財の隠蔽構造の薄汚さ,いわゆる「やくざ」などの裏社会とのつながりを指摘していて,一応は堅気の私には「はぁそういうものなのかなぁ」と蒙を啓かれる思いだったのだが,1章だけ,不謹慎にも笑ってしまった「名探偵の推理」があった.
以下,ネタバレになってしまうのだが….
大相撲の元親方と同期の元力士が,相撲協会(というか角界)の腐敗を『週刊ポスト』誌で内情暴露の形で糾弾していたさなか,両氏が同日,同じ病院で,同じ肺炎により亡くなった事件がそれである.
読み進めると,両氏とも当時の関係者の証言から,糖尿病という持病を抱えつつも,死の数日前には二人でゴルフを楽しみ,また,(「死人に口なし」とは言うものの故人の関係者が存命かと思われるので多少書きにくいが)当時彼らが拠点としていた中京圏の歓楽街でいわゆるプロの女性と性交渉を持った,という.それだけ両氏とも元気だったということだ.しかし,その数日後,両氏とも「在郷軍人病」と呼ばれるレジオネラ菌への感染からくる肺炎により同じ病院で死亡する.
この二人を死に追いやったのは「ソープランドだ」と著者は談じる.もう,ここで申し訳ないが笑ってしまった(爆)たしかに,慢性の病気を煩っている二人は,多少は一般の人よりも免疫力が低下していたかもしれないが….それなら,ゴルフ場の浴場だってレジオネラ菌の感染はありうるじゃないか,と思ったのだった….
とにかく,この妄想に近い推理は,実際に読んでいただいた方がいいと思われる.小説仕立てで実に逞しく展開されている.
今年新刊のモノではない(文庫なのだから大抵そうだが),いいモノを読んだという一冊.
ちなみに『週刊ヤングサンデー』で著者原作の『RAINBOW』が連載中で,これもなかなか面白く読ませていただいている.
RAINBOW 18―二舎六房の七人 (ヤングサンデーコミックス)
- 作者: 安部譲二,柿崎正澄
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2007/09/05
- メディア: コミック
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